【イベントレポート】彫刻家・石川直也と語る「自立」と「寄りかかり」
Report
2025.10.24
2025年9月12日(金)、VALLOON STUDIO SHIBUYAにて、「ビジネスパーソンのためのアートな交流会」第4回を開催しました。
今回のテーマは──「ビールと、石と、アートな夜」。
ゲストには、大理石で「自立しない人」を彫り続ける彫刻家・石川直也さんをお迎えしました。
石川さんは江ノ島のアトリエを拠点に、自然と人の関係をテーマに制作を続けているアーティストです。

■「自立しない人」という問い
石川さんの代表作《自立しない人》は、その名の通り、一人では立てない彫刻です。
壁にもたれ、床に寄りかかるその姿は、まるで“支え合う人間”のよう。
「重量に逆らわず、ありのままの姿で立つ人を彫りたいんです。
倒れそうでも立っている──それは“関係の中で生きる”ということなんです。」
素材には大理石を使用。
重く、動かすのも容易でない石だからこそ、「寄りかかる」「支え合う」という行為がよりリアルに伝わります。

■触れて、立たせて、語り合う
イベント当日は、石川さんが制作した小さな彫刻を囲み、参加者が実際に“立たせる”体験を行いました。
誰かが支え、誰かがバランスを見て、別の人が傾きを直す─そんな手の動きの中に自然と会話が生まれていきます。
「立たせようとか積んだりって、子どもの頃の習性みたい」
「積みたくなる、立てたくなる──本能的な気持ちかも」
「大人になるほど、こういう“手遊び”って忘れちゃうよね」

作品を“触れながら”語る時間は、アート鑑賞というよりも、“思考の実験”のようなひとときでした。
■「自立」ってなんだろう?
作品を通じて浮かび上がったのは、さまざまな「自立」のかたち。
参加者同士の対話からは、多様な視点が交差しました。
・自分の意思を持ち、誰かを巻き込み、何かを達成すること
・経済的な自立と、精神的な自立の違い
・依存しないこと、頼らないこと
・そもそも「完全な自立」は存在するのか?
・依存先を増やすことも、自立の一形態かもしれない
・「助けて」と言えることも、ひとつの強さ
「電車に乗るってことも、サービスに“依存”していることなんですよね。
自分が何かに寄りかかっているという自覚を持つことが、むしろ健全なのかも。」
“自立”とは、完全に一人で立つことではなく、支え合いながら生きること。
そんな気づきが、静かに共有されていきました。

■感性に風を通す夜
石川さんは最後にこう語りました。
「アートは答えを出すものじゃなく、問いを深めるもの。
“なんかいいな”という感覚の中に、自分の思考があるんです。」
アートは、感覚と思考のあいだを自由に行き来するための媒介。
触れる・考える・話す──その過程の中に、小さな発見とつながりが生まれた夜でした。
【次回イベントのご案内】

次回の「ビジネスパーソンのためのアートな交流会」は、2025年11月6日(木)に開催予定です。
アートの視点を日常や仕事に取り入れてみたい方におすすめのイベントです。
感性に風を通すひとときを、ぜひご一緒に。
お申し込みはこちらから▼
まだ足を運んだことのない方も、ぜひ次回の「アートな交流会」で、新たな視点や対話の楽しさを体験してみてください。
