【レポート】アートを“飾る”って、どういうこと?
Report
2026.01.13
神南で出会った、植物と器とアートの話

「アートを生活に取り入れる」と聞くと、どこか少し構えてしまう人も多いかもしれません。
ちゃんと飾らなきゃいけない気がする。センスが問われそうで不安になる。
そもそも、どこから始めたらいいのかわからない。
そんな感覚に、そっと別の視点を差し出した時間がありました。
植物と器から始まる対話
VALLOON STUDIO SHIBUYAでは、2025年12月12日〜23日までVALLOON ART MARKET 2025を開催していました。
その展示の会期中、特別企画として開催されたトークイベント「翠と土とないしょ話」。
本イベントでは、観葉植物・盆栽。器の専門店「翠堂明-MIDORIDOUMEI-」と、5名の陶芸作家によるコラボレーション作品を軸に、制作の背景や植物と器の関係について語り合いました。
(ゲスト:翠堂明店主 吉川靖 / 柿沼美侑 / 小磯彩乃 / 小西優芳 / つえたにみさ / mishina )
※本企画は、すでに会期を終えた展示の中で行われたイベントです。
VALLOON ART MARKETは、「アートと生活のつながりを浮かび上がらせる」ことをテーマにした展示です。
作品を“鑑賞するもの”としてだけでなく、「どんな気持ちで迎え、どんな日常の中に置くのか」という視点から考える場として、今年で2年目を迎えました。
今回のコラボ企画では、まず陶芸作家が器を製作し、その器をもとに翠堂明・吉川靖さんが植物を仕立てるというプロセスを採用。
完成形が見えないまま手渡された器に対し、どの植物を、どんな感覚で合わせるのか。その“対話の時間”そのものが作品づくりになっています。

器から始まる想像、植物から始まる物語
トークでは、作家それぞれが器を製作する際に大切にしている感覚や、普段の製作との違いについて語られました。
「同じものは二度とつくらない」
「出会いを大事にしたい」
「器は、キャンバスのような存在」
「完成形を決めすぎないからこそ、生まれる余白がある」
一方、吉川さんが植物を仕立てる際に大切にしているのは、
「植物に詳しくない人でも、家に置きたくなること」
「決まりきった“正解”をつくりすぎないこと」
「直感と、その植物が持つ個性を信じること」
だといいます。
器と植物は、どちらが主役というわけでもなく、互いの存在に影響されながら、ひとつの形になっていく。
「どんな器がくるかわからない」
「どんな植物になるかわからない」
その不確かさこそが、今回のコラボレーションのいちばんの面白さでした。

曖昧さという、優しい余白
印象的だったのは、「曖昧さ」についての話です。
形が少し歪んでいる、モチーフがはっきりしすぎていない、タイトルをあえてつけない。
それは説明を放棄しているのではなく、見る人それぞれの記憶や感覚に委ねるための余白なのだと。
植物もまた、置く場所や季節、日々の関わり方によって姿を変えていきます。
完成した瞬間がゴールではなく、生活の中で変化し続けることそのものが、作品の一部になる。
「飾る」というより、一緒に時間を過ごすという感覚に近いのかもしれません。
生活に迎え入れるアートとして
今回展示されていたコラボ作品は、ご購入後、そのまま持ち帰ることができるものでした。
けれどそれは、「買ったら終わり」という意味ではありません。
家に迎え入れ、水を上げ、置き場所を考え、少しずつ暮らしに馴染んでいく。
元気な日も、少し元気のない日も含めて、生活のリズムに寄り添う存在になる。
トークイベントを通して、「アートを生活に迎え入れる」という考えが、とても現実的で、やさしいものとして共有された時間でした。

神南という場所で、共につくる
VALLOON STUDIO SHIBUYAは、渋谷・神南の街を拠点に、展示やイベントを通して、人と人が緩やかにつながる場を育てています。
アート、植物、ものづくり、暮らし。
ジャンルを越えて関係が重なっていく中で、今回の翠堂明さんとの取り組みも、「共につくる」対話から生まれました。
VALLOONでは、美術教育の現場で培ってきた視点と、これまでに築いてきたアーティストとのつながりを土台に、アートで何かに挑戦したいという想いに伴走しています。
完成された答えよりも、対話から生まれるかたちを大切に。
もし、「まずは話してみたい」と感じたら、どうぞ気軽に声をかけてください。
神南の街から、また新しい試みが芽吹くことを楽しみにしています。

