【イベントレポート】理想と経済のあいだで、何を選ぶのか
Report
2026.05.19

2026年4月16日(木)、VALLOON STUDIO SHIBUYAにて「ビジネスパーソンのためのアートな交流会#8」を開催しました。
今回のテーマは、
「理想と経済を両立させる生存戦略」。

理想を追いかけること。
現実に適応すること。
その二つは、本当に反対側にあるのでしょうか。
今回の交流会では、アーティスト・新宮大史と、有限会社金沢アトリエ 代表取締役・尾竹仁氏を迎え、展示作品に囲まれた空間の中で対話を行いました。
アートを「見る」だけではなく、アートを取り巻く社会や経済、そして自分自身の価値観について考える。
そんな時間を、参加者同士の対話を交えながらひらいていきました。
「理想」と「経済」は対立するものなのか
クロストークでは、アート・広告・経営という異なる領域から、現代社会における「価値づくり」について考えました。

特に印象的だったのは、「市場に合わせ続けた先に、何が残るのか」という問いです。
便利さや効率が求められる一方で、社会のニーズに応え続けることで、いつの間にか表現やサービスが均質化していくこともあります。
尾竹氏からは、広告業界で感じてきた違和感や、経営の現場で見えてきた「数字だけでは測れない価値」についての話がありました。
一方、新宮氏からは、世界がどのように構築され、また変化していくのかという視点から、情報化社会と表現についての考えが共有されました。
理想を追うことと、社会のニーズに応えること。
どちらか一方を選ぶのではなく、その間を行き来しながら、自分たちなりの価値をつくっていくことはできないのか。
参加者との対話を交えながら、問いは少しずつ深まっていきました。
完成された理想ではなく、手を動かす中で見つかるもの
対話の中で印象的だったのが、「最初から明確な理想を持っていなくてもいいのではないか」という話題でした。

「やりたいことを持っていなければならない」
「理想を語れなければならない」。
そんな空気を感じることは、少なくありません。
けれど、実際に何かをつくり始めるとき、最初から完成された理想や明確な答えがあるとは限りません。
今回のワークでは、参加者が実際に粘土に触れながら、それぞれの感覚を形にしていきました。
ある参加者からは、
「最初に作ろうと思っていたものとは、全然違うものになった。でも、その偶然の方が面白かった」
という声も。
最初に理想や目的を決め、その通りに進めるだけではなく、手を動かし、試行錯誤する中で、自分にとっての「面白さ」や「違和感」を発見していく。
制作を通じて、そんなプロセスを体験する時間となりました。
理想と現実は、対立だけではない
対話が進むにつれて、
「理想」と「ニーズ」
「表現」と「技術」
「個人」と「市場」
といったものを、単純に二つに分けて考えなくてもいいのではないか、という視点が浮かび上がりました。

理想を貫くことと、社会と接続すること。
どちらかを捨てるのではなく、行き来しながら更新していく。
その曖昧さや揺らぎそのものが、現代における「生存戦略」のひとつなのかもしれません。
理想と経済は、どちらか一方を選ぶものではない。
むしろ、その二つの間を往復することで、自分たちなりの価値や表現が見えてくる。
今回の対話から、そんな可能性が見えてきました。
アートは、「答え」ではなく「揺らぎ」をつくる
今回の交流会でも、明確な結論をひとつにまとめることはしませんでした。
その代わりに、一人ひとりの中にいくつかの問いが残りました。
- 自分は、何を「理想」だと思っているのか
- 誰の価値基準を生きているのか
- 市場や社会のニーズに合わせる中で、自分が大切にしたいものを見失っていないか
- 違和感を感じたとき、それを見ないふりしていないか
- 理想と現実の間で、自分は何を選んでいくのか
アートは、必ずしも答えを与えてくれるものではありません。
けれど、これまで当たり前だと思っていた考え方を少し揺らし、新しい視点を生み出すきっかけにはなります。
展示作品に囲まれた空間で、登壇者と参加者の言葉が重なっていく。
そこには、効率や正解から少し距離を置き、「まだ言葉になっていない感覚」に触れる時間がありました。
「考える余白」をひらくために
VALLOONでは、アートやクリエイティブを通して、人と人が出会い、普段とは異なる視点に触れられる場をつくっています。
「ビジネスパーソンのためのアートな交流会」も、そのひとつです。
ビジネスや仕事という日常的なテーマを、アートや表現、対話という異なる入り口から考えてみる。
すぐに答えを出すのではなく、問いを持ち帰る。
自分とは異なる価値観に触れ、自分自身の判断軸を少し見つめ直してみる。
今回の「理想と経済を両立させる生存戦略」というテーマも、参加者それぞれの仕事や生き方に持ち帰ることのできる問いとなりました。
VALLOONはこれからも、効率や結論から少し離れて、思考と感性が交差する「考える余白」をひらいていきます。
